2018年 08月 20日
イーストウッド月間Part6 |
その昔、下高井戸シネマで黒澤明作品を一挙上映したとき、運よく全作品を見ることができました。
ダーティー・ハリーは第5作まで作られ、4作目のみイーストウッドが監督をしています。
「あれ、どっかで見た顔、誰だっけ?」 第5作に若き日のジム・キャリーが最初に殺されるヤク中のロック歌手役で出ていました。
全編、アウトローな刑事ハリー・キャラハンは文句なく、カッコいいです。 今なら懲戒免職間違いなし、ハハハ。 ぶっ壊す、ぶちのめす、殺す、殺す。 不死身のヒーローは、初老になっても走る、飛ぶし、殴る、そしてモテる。
1992年キャットシッター開業の年の『許されざる者』はいわばハリーのネガ版。 ここでのイーストウッドは簡単に人殺しはしなくなっています。 耐えて耐えて、泥臭いこと、みっともないこともあえて見せておくからラストが締まる。 ただぶっ殺すアクションから、人生の理不尽や底知れぬ部分に比重が移ってくる。 この流れはハリーシリーズをやっていたからではないかな。
2002年の『ブラッド・ワーク』はキャラハンを一捻りさせたキャラで、ちょっとハリーを懐かしんでいるかのよう。 ダーティー・ハリーの第5作、キャラハンは犯人からご指名をされるほど注目を集めます。 その延長戦のような設定が本作です。 心臓移植を受けた元FBIのプロファイラーと犯人。 自己がなさすぎて好悪がわからない犯人、可愛さ余って憎さ百倍ってやつですね。 そんなヤツに目をつけられたら大変。
毛色の変わったところでは、1995年の『マディソン郡の橋』、メリル・ストリープと共演。今回見直したら、30代で観た時の感想とはまるで違いました。 美しいじゃないですか、いい話だなぁ、やっぱやるなぁ、イーストウッド。 そして世にいうメリル・ストリープの演技力をようやく認識しました(遅い)。 不覚にも涙腺が緩みました。
日本は火葬が主ですが、映画では息子が「火葬なんてとんでもない」と憤慨するシーンがあります。 メリルは子供達に「火葬して川の橋から散骨してほしい」との遺言を残したのです。
樹センセの本に確か「実らない恋が一番美しい」とありました。 なるほど勢いに任せた恋(書くのも照れるぜ)は大抵壊れますからね。 フラジャイルなものに焦点を当てた映画なのでした。
こんな風に昔見た映画を見直していったら、時間がいくらあっても足りません。 もっともほとんど娯楽がない田舎暮らしだからできるのかも知れませんけど。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。 秋めいてきた今週、整理整頓、清潔で快適な空間作りに精進します。
私、黒澤明は白黒時代の作品が好みです。
三船敏郎とのコンビは最強でした。
世界の黒澤明に、イーストウッドが思わず駆け寄って
「私はあなたのおかげで映画を作ることができる」
と告げたそうです。
イーストウッドの場合、初期作品より彼が70代80代になってからの作品の方がいいなと思うのは私が年をとったせいでしょうか。
by cs-nanri
| 2018-08-20 08:52
| 映画と舞台と美術館