2020年 09月 12日
チャドウィック・ボーズマンの瞳 |
追悼チャドウィック・ボーズマン、彼の出た映画を観れば見るほど、胸が締め付けられる。「ブラックパンサー」
この映画、娯楽としても最上級だが、政治的に、社会的にも深いテーマがある。 ブラックライブズマターとリンクしてるというか、この作品がブラックライブズマター活動の盛り上がりを支えているのではと思えるほど、内容が濃い。 チャドウィック演じるティチャラはワカンダ王子として育てられ、父が事故死して、王位を継ぐ。
5つの部族が共存するワカンダ国のモデルはナイジェリアとも、アフリカ大陸すべての象徴とも考えられる。 そして、親王は元恋人ナキア、天才科学者の妹シュリ、軍団長オコワ、彼女らの言葉にそれまでの生き方を変えざるを得ない。 さらにヴィラン役のキルモンガーの正体を知るとき、ティチャラの既成概念は崩壊。
やはり「死」を体験してこその「再生」なのである。
監督ライアン・クーグラーは「ゴッドファーザー」と「007」に影響を受けたそうで、随所にその痕跡がある。 この監督「クリード」(「ロッキー」シリーズ)では、父と息子のもつれた糸を解きほぐすことを描いていた。 この作品でアポロの息子を演じたマイケル・B・ジョーダンが本作ではキルモンガー。 崇拝していた父、しかしその父は実の弟を殺し、その息子をオークランド置き去りにしていた。
それぞれの信義のもとに行動せざるを得ない現実。 正義の立て方は立場によって、考え方によって違うのだ。 と、内容を全部書いてしまいそう、危ない、危ない。
内容はともかく、とにかくキラキラした瞳のチャドウィックを見るだけでも一見の価値あり。 「純粋無垢」という言葉がピッタリ。 あんなに美しい瞳は見たことがない。 そして、この作品も誰にも明かさず、手術と治療をしながら撮っていたのだと思うと泣けてくる。
ラストの名セリフ 「賢者は橋をかけ、愚者は壁を作る」 さらに「マーシャル 法廷を変えた男」のチャドウィックも素晴らしい。
この人はとことん黒人の意識高揚のために生き抜いたのではないか。 「42 世界を変えた男」もそうだった。 「ブラックパンサー」も然り。
ミッション全うしたんだな、チャドウィック・ボーズマン。 忘れちゃならない「ジェームズ・ブラウン 最高の魂を持つ男」も圧巻。完全にJBが乗り移っている。 いやぁ、天才の孤独と狂氣は共通するのだな。 私的にはダン・エイクロイドがマネージャー役で共演してるのに感動。 「ブルース・ブラザーズ」はマイフェイバリットムービー。
きれいな魂の人だったんだろうな。 今、映像を通じて彼の美しい瞳を見れることに感謝したい。
彼は病状をあかさず、大腸がんの治療と手術の合間に作品に出ていたという。
どっかの国の誰かさんはわざわざ診察を受けるところを流してたわな……。
by cs-nanri
| 2020-09-12 09:57
| 映画と舞台と美術館