2020年 12月 31日
法廷もの2本「シカゴ7裁判」「黒い司法 0%からの奇跡」 |
まず「シカゴ7裁判」は今のコロナ禍の政治不信と重なります。
ラストを噛みしめたくて、すでに2回観ました。
ベトナム戦争反対デモを扇動したとされる青年たちが国から起訴され、裁判となります。
背景には政治、「見せしめのためにあいつらを刑務所に打ち込んでやる」という権力をかさにきた、有無を言わせぬやり方。
国のやり方に文句言うとこんな風になるぜ。
オレ様に逆らうと左遷しちゃうぞ、という我が国のガースーのような。
で、起訴された7人は思想の違う団体が入り組んでケンカばかり、バラバラに裁判の足を引っ張る。
サシャ・バロン・コーエン演じるアビーはコメディアンで、デモのやり方も政府をチャかす、麻薬、淫行だってあり、みたいな。
エディ・レッドメイン演じるトムは政治家を目指している真面目派。
主にこの2派がせめぎ合いながら、弁護士、検事、判事らが縦横斜めに絡み合う。
うんざるするほど「きったねぇ」やり方連発。
特に黒人への差別は「いくらなんでも、そこまでやる?」というレベル。
ええーっ、それはダメじゃん、と思っていると、あ、そう来る?と氣持ちよく覆される。
とにかく、ラストは鳥肌モン、必見映画です。
邦題はダサいけど、観て良かった〜。
なんだかんだ言ってもアメリカの良心というか、こういう映画をちゃんと作れるところがスゴいと思うわけです。
マイケル・B・ジョーダンは「フルートベール駅で」では警官に射殺される青年をやってましたが、こちらでは冤罪の死刑囚を助ける弁護士となります。
黒人の死刑囚率が異様に高いアラバマ州で、奮闘する若手弁護士、そして死刑囚にされたジェイミー・フォックス演じるジョニー・D。
「黒人は生まれながらに有罪だ」
というセリフが胸に突き刺さります。
絶望している弱者たちの希望になることは、彼らと同じように差別を受け、傷づけられることでもあります。
それでも、なぜ彼は弁護を辞めなかったのか?
こういう人物が出るところがアメリカの層の厚さなのかも。
ハラハラしながら見ていると、こちらも大逆転(ちょっとあっけなさすぎ)があって、後味は悪くないのですが、いろいろ考えさせられます。
日本は今未曾有の情けない国となっていますが、それでも治安や電氣ガス水道、交通網、医療機関などのインフラは整っていて、露骨な差別や階級意識はありません(今のところ……)。
だからか、「Go Toキャンペーンやってるんだから、コロナなんか大丈夫なんだ」ってな危機感のないアホが増える。
いいのか、悪いのか。
しかし、差別や思想や宗教の違いがある社会では、自分を守るために声を上げなければならない。
必然でディベートが発達したんだと思います。
日本は今も以心伝心の傾向が残っているから、空氣を読めない人ははじかれる。
対決より「なぁなぁ」「まぁまぁ」が幅を効かせる。
ですよね?
どちらがいいとか悪いではない。
そもそも思想の統一なんかできない。
2本の映画を見て、最終的に情緒の前に理屈はなきに等しいと思いました。
あとイワシの群れ、ですかね。
大きな動きを構成するのは1尾ずつのイワシですが、個の思惑を越えた大きな何かに動かされている。
日本人もイワシの群れと言えなくもない。
どこに所属するのか、これってけっこう関係してると思うんです。
まぁ、そんなことをアレコレ頭の中でグルグル、グルグル考えたのでした。
いや、何も考えずともこの2本は見るに値する映画です。
ご覧になってみて感想などお聞かせいただけたら、また氣付きがあるかも、ですね。
by cs-nanri
| 2020-12-31 10:11
| 映画と舞台と美術館