2022年 09月 21日
上橋菜穂子『鹿の王』はコロナを予言していた |
こうした名作を読むと、児童文学の奥深さに圧倒されます。
大人向けの小説の類はあまり読まないのですが(読んでもがっかりすることが多い)、児童文学の名作にはほぼ裏切られたことがありません。
タイトルだけは聞いたことがあった『鹿の王』、『精霊の守り人』シリーズの上橋菜穂子さんの作品。
いやね、いますぐ図書館で借りて読んでください。
2014年の出版、コロナ時代を先取りした内容です。
ヒトのからだを侵す敵であるウィルスが、時として、からだを変化させる役割を担う共生体としてふるまうことがあるのではないか?
という考えから書き始められた本作、山犬と狼の交配で生まれた獣に噛まれた主人公のヴァンは、嗅覚が異様に鋭くなり、獣たちとつながることができるようになる。
ヒトとしての部分、獣としての衝動が交錯する中で、ヴァンが選ぶ道とは。
ヴァン同様、噛まれて視覚が超鋭敏になった幼子ユナがこの物語の希望の光である。
このユナにタオちゃんが重なる。
背景には部族間のたたかいが絡んでおり、これはロシア・ウクライナ戦争にも通じるかのよう。
病氣とからだのせめぎ合いは、たしかに人社会と合わせ鏡だ。
こんな作品を読んで大人になったら、今のような幼稚な政治家が跋扈する社会は免れたのではないか。
お手軽安易なものばかり見聞きしていると、考える力が弱体化する。
あごを使わないファストフードばかり食べているとバカになるのと同じだ。
噛む力が弱くなると、考えるのがおっくうになるってことです。
自分で咀嚼する力がないと、栄養にもならないし、筋力がつかないから、体力が落ちる。
読書は下半身。
下半身を鍛えない限り、考える力は育たない。
読書はスクワット。
脚の筋肉が一番大きいのだ、ここを鍛えるのが1番。
21時以降はスマホの電源を切って、就寝まで読書。
読書、睡眠、猫。
死ぬまで大切にしたい。
by cs-nanri
| 2022-09-21 08:47
| 本がなければ