2023年 06月 13日
海辺の親子 |
日曜の夕方、海辺で釣りをするお父さんと息子がいました。
「こんにちは~」
「こんにちは~」
「こんにちは~」
この挨拶がよかったんですよ、実に氣持ちのいい声だった。
お父さんはまだ30手前、息子ちゃんは小学校に上がる前。
「何が釣れますか?」
「キスです」
「ほら、コレ見て、キス」
バケツの中に大小のキスがいました。
「あら、こんなに。これ、どうやって食べるんですか?」
「天ぷらです」
「あのね、天ぷらと刺身~」
「うわぁ、いいわね。今夜は天ぷらかぁ」
「うふ、ほら、これ見て、きれいな貝殻もあるよ」
「うわぁ、ホント、きれいねぇ。おばちゃんはこんなの拾ってるの」
「へぇ、ボクも探す」
それから、この子はシーグラスハンターになって、一生懸命砂浜に目を凝らし始めたのです。
「これ?」
「うん、きれいだけど、これは貝殻。シーグラスはガラスは破片が波に洗われて丸くなったものなの」
「これは?」
「そうね、これはきれいな石。緑や青が多いけど赤いのを見つけたらすごいよ」
彼はそれらしきを拾っては、ワタシに見せに来ます。
ワタシもなぜか立ち去りがたくなっていました。
お父さんも釣りをしながら、にこやかにわが子を見ておられる。
構えたところがまるでない。
そして、ときどきキスが釣りあげられる。
「あっちの端まで探してくるね」
ワタシはいつもの海辺散歩に戻りました。
戻ってきたら、またこの親子に会えるだろうか?
途中、大きめのタコ貝の破片を拾いました。
30分後、親子はまだ釣りをしていました。
「コレ、知ってる?」
タコ貝の破片を息子ちゃんに手渡すと、
「キャベツみたい~」
と言って、瞳をキラキラさせました。
「ほら、シーグラス、こんなに集めたよ」
と収穫を見せると、息子ちゃん、
「コレ?」
手のひらを広げました。
今度は正真正銘のシーグラスでした。
「そうそう、コレよ。わかったんね」
続いて、彼はいくつかのシーグラスを発見しました。
「ありがとうね」
彼はタコ貝の破片を持ったまま、またもや熱心にシーグラス探しにかかりました。
ワタシも和やかな氣持ちで、親子さんの周辺にいました。
やがて6時の音楽が鳴ったところで、さよならすることに。
「またね~」
「またね、ありがとうね」
お父さんも丁寧に頭を下げて
「ありがとうございました」
と。
今夜、家族でキスの天ぷらをする光景が目に浮かびます。
ワタシまでウキウキして家路につきました。
名前も知らない親子さん、また、会えるかな。
by cs-nanri
| 2023-06-13 08:20
| 猫師匠たち