2023年 08月 11日
河合隼雄『対話で探る「新しい科学」』 |
おはようございます。
すっこーんと晴れ上がった青空、今日はシーツがパリッと乾きます。
河合センセの『対話で探る「新しい科学」』、以前読んだときははちんぷんかんぷんでした。
今も分からないところはありますが、あ~、そういうことだったのか、と思うところも。
目次だけ抜き出してみますね。
・清水博さんと 「何が起こるかわからない」ことを科学する
・井谷純一郎さんと 「個」をとことん見極める
・鶴見和子さんと 創造性の根は自然のつきあいの中にある
・日高敏隆さんと 「科学的事実」にまどわされるな
・猪瀬博さんと 方向転換しないと落ちこぼれる
・丸山圭三郎さんと 科学と神秘のあいだ
・村上陽一郎さんと 「科学は絶対」をやめる
この本が出てからすでに四半世紀が経ちますが、ワタシはいったい何をしてきたんだろう、と思います。
なにもしてこなかった、なにも考えてこなかった、がーーん。
本書で、
「進歩」や「発展」はしなくていい
とあり、大いに頷きました。
もう充分です。
富や快適便利を求めて、氣づけば以前より時間がなくなっている現代人。
変な話よね。
河合センセは宮沢賢治を読んで育ったそう。
なかでもお氣に入り賢治作品は『毒もみの好きな署長さん』。
この作品はかなりブラック。
村に新任で来た警察署長さんは、違法の毒もみで魚を捕るのが大好き。
やがて悪事がばれて逮捕され、死刑を宣告される。
死んだら、あっちで毒もみをやってやろう、とにやり。
その堂々たる態度に、少年が感銘を受ける場面でお話は終わる。
河合センセ、なぜこの話がお好きだったのか?とずっとこころにひっかかっていた。
それが、最近わかりかけているように感じます。
『影の現象学』を読んでから、本書を手に取ったのもワタシには必然。
河合センセの中の影の部分、池波正太郎的に言えば
人は良いこともしながら、同時に悪いこともする
のような……。
ヒトは多面体であることを、賢治は善悪ではなく、もしくは光と陰だけではないことを教えてくれている(ように思う)。
河合センセは晩年、近しい人に「チベットに修行に行きたい」ともらしていたそう。
多くの方から尊敬され、敬愛された河合センセがなぜ?
文化庁長官や深層心理療法家としての仕事を投げ打ってまで、なぜ修行?
光が強ければ強いほど、こころに抱えた闇も深かったのでしょうか?
高みに上がれば上がるほど、地下に潜る階段も深くなる?
生きるバランスはこれが釣り合わないとね。
光も影も浅いままでいるか?
その逆をたどるか?
賢治や河合センセは高く、深く、どんどん、ずんずん。
見えていた世界が違うのだろうな、と思います。
とまぁ、1行読むたびにいろんなことに思いが広がって、読み進むのが遅くなっています。
でもこれが本来読書の愉悦なのでしょう。
死ぬ前に知ることができてよかった。
by cs-nanri
| 2023-08-11 09:31
| 本がなければ